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境港からバスで50分!自然に囲まれた「かたゑ庵」で心をひらく旅

アクティブ 2021.12.25

夢を叶えるために東京のベンチャー企業に転職したものの、そこで求められるのは結果だけ。水面下で足をバタつかせながら、仕事ができる自分を演じてきたけどそろそろ限界。そんなタイミングで大学時代から付き合いがある友人から、山陰のゲストハウスに泊まりにいかないかとの誘い。ふたつ返事でOKした僕を待ち受けていたのは……

東京から3時間ちょっとで行ける人口500人の漁村

今回の目的地は境港市の北側、島根半島の日本海側にある松江市の片江。今でこそ人口500人の小さな漁村ですが、昭和30年代まで活躍した遠洋漁業で有名な片江船団の発祥の地でもあり、毎年1月6日以降の最初の日曜日に行われる「墨つけとんど」でも知られている場所です。

片江は島根県ですが、東京からのアクセスは米子鬼太郎空港(境港市)を利用するのがおすすめ。ただし交通の便がそれほどいい場所ではないので、フライト時間よりも空港から片江までの移動時間のほうがかかります。

本来ならバスを乗り継いで片江まで移動する必要があるのですが、旅に誘い出してくれた友人は大阪から車で来るということなのでJR境港駅でピックアップしてもらい、そのままノンストップでかたゑ庵まで移動しました。

バスを乗り継ぐと境港駅から片江までは約50分。これから行くことになる人のために、バスを使ったアクセス方法も記載しておきます。

羽田空港 → 米子鬼太郎空港:飛行機
米子鬼太郎空港 → 境港駅:隠岐連絡船接続バス or JR境線
境港駅 → 宇井渡船場:境港線【美保関コミュニティバス】
宇井渡船場 → 片江伊塚谷:七類線【美保関コミュニティバス】

羽田空港から換算すると3時間20分の長旅ですが、スムーズに移動したければ米子鬼太郎空港でレンタカーを借りるのがおすすめ。車があると買い出しにも行けて何かと便利です。ロードバイク乗りなら、米子鬼太郎空港から自転車で移動するというのもいいかもしれません。

築100年以上の古民家を国際交流の拠点に

今回お世話になった宿は「かたゑ庵(かたえあん)」。オーナーの青戸裕司さんが地域の活性化のために片江を国際交流村にしたいと考え、2019年8月にオープンしたゲストハウスです。

青戸さんは40年以上も国際交流ボランティアに関わってきた経歴があり、かたゑ庵は国際交流の拠点としてスタートします。

アイデアマンでもある青戸さんが考えた「民食」というスタイルが注目され、このまま流れに乗って外国人が訪れる場所になると思われたところでコロナ禍に突入。しばらくは外国人が村を訪れることもないと判断した青戸さんは、地元の人たち向けに、ここにしかない体験を提供しています。

例えばワインや日本酒などを海に沈めて熟成させたり、かたゑ庵の古い建物や美しい浜辺を使ったスチール撮影をしたりと、積極的な事業展開を行っています。

かたゑ庵のベースとなっているのが築100年以上の古民家。以前は民宿として使われていたそうですが、廃業してから手つかずで、ほぼ廃墟のようになっている状態から、仲間の力を借りて人が暮らせる状態にまで復旧させました。

ただし、ゲストハウスとして営業をするためにはさらなる設備投資が必要ということで、クラウドファンディングを使い設備費用の支援を募ったところ、目標金額の137%の支援が集まり、無事ゲストハウスとして営業を開始できたという経歴があります。

建物内はゲストハウスらしく雑多な感じがありながらも、古民家の味わいも生かされていて居心地がいい。それに加えて青戸さんが話し上手ということもあり、チェックインしてから夕食までずっとかたゑ庵の歴史についての話を面白おかしく語ってくれました。

片江を愛する2人の男たちとの語らい

初日の夜ごはんは建物の外でBBQ。名物は水槽からダイレクトに取り出して焼くサザエなのですが、それに加えてたくさんの食材が用意されています。オーナーの青戸さんとパートナーでもある宮崎哲人さんもBBQに加わり、かたゑ庵や片江についての話を聞かせてもらえました。

青戸さんもなかなかの個性派ですが、宮崎さんも魅力的でかたゑ庵を紹介する上で忘れてはいけない重要人物の1人。消防士という大変な仕事をしながらも、自分でカヤックを作ったり、ヤブに覆われていた片江古道を復元させるために山に入ったりするなどとにかくアクティブ。

青戸さんが赤い炎だとすれば宮崎さんは青い炎。性格は違えど片江という漁村に対する熱い想いはそれぞれが持っており、お互いにリスペクトしあっている関係。人生にこのようなパートナーがいるということを羨(うらや)ましく感じます。

そんな2人の話を聞いているうちに、徐々に僕も心が開かれていきます。本音で話をしてくれるから、こちらも自然と本音になっていく。自分が他人に見せないように隠してきた部分を引き出されるようで、でもそれが心地よくもあるから不思議です。

BBQを終えても、まだまだ聞き出したいことや語りたいことがあり、場所を変えて室内での第2幕がスタートしたのは言うまでもありません。

海とひとつになれるシーカヤックツアー

片江の港は防波堤が整備されているので、普段はとても穏やかです。ところが、私たちが遊びに行ったタイミングは季節の変わり目ということで大荒れ。

それでも、防波堤のおかげで港内は大きな波が立つこともなく、2日目は午前中からシーカヤックに乗り込みました。本来なら外海の絶景や洞窟などを楽しめるということなのですが、内海も十分に広くて漕ぐことに集中しているとあっという間に時間は過ぎていきます。

ところどころで休憩をしながら、片江の歴史についてのレクチャーが入ります。かつて漁業でにぎわった時代の片江を、波に揺られながら思い浮かべます。その延長線上で暮らす人たちがいて、そこを訪れた僕らと交差する。それは小さな奇跡なのかもしれません。

シーカヤックは浅瀬でも入り込むことができるので、入り江に停泊してのサバイバルカフェなんていう遊びもできます。自分たちで火をおこし、珈琲(コーヒー)の豆を挽(ひ)く。都会の生活にはない、非日常のゆっくりとした時間が流れていきます。

そして最大のお楽しみであるサンセットタイムがやってきます。もう1度海にシーカヤックを出し、最も美しく見える場所にシーカヤックを停留させて、グリューワインとおつまみをいただきます。お酒が入ったのでそこからのパドリングは青戸さんと宮崎さん任せ。

すべてを委ねてしまえば、あとは気持ちよくなるだけ。まるで自分の体が暗がりとともに海に溶けていくようで、なんとも心地いい時間を過ごしました。

おしゃべりな男たちも無口になるカニ鍋

2日目の夜はどうしてもカニを食べたいということで、買い出しのために車で境港市に移動。青戸さんの紹介で、地元の人たちが買い物をする大きなスーパーで格安の松葉ガニを購入しました。この自由さがゲストハウスの魅力ですね。

ザクザクと大きめに切った野菜とまるごと1杯のカニが入った鍋が2つ。さらにボイルされた松葉ガニも山積みで、まさに男の料理。ただ、おしゃべりな男たちさえも口数が少なくなるのがカニの怖いところ。黙々と取り出したカニの身を口に運びます。

それでもサンセットシーカヤックで心が完全に開いてしまい、みんなの話を聞きたいし、自分も話してしまいたいモード。その想いは私だけではなかったようで、鍋のカニが尽きた頃から会話が盛り上がり始めました。

自然体でリラックスして語りあえる。これは1泊2日ではできなかった体験です。同じ時間を共有したことで、お互いの距離が近づくことで気を許せる関係になる。それが可能にしたのも青戸さんと宮崎さんの存在が大きかったのは言うまでもありません。

人ともすっと懐に入ってくるのですが、その距離の詰め方が絶妙で、こちらは身を委ねるだけでいいわけです。陸の上でも海の上でも委ねてばかり。ただそれが許されるのが、片江が持つ本当の魅力なのかもしれません。

美しい海を眺めながらの早朝ランニング

心を開きっぱなしで東京に戻るのは不安なので、3日目の朝は少し早めに起きて、海沿いの道をランニングして自分と向き合います。島根半島は日本有数のリアス式海岸になっていて、道路にアップダウンがあり、しっかりと走れるランニングコースとなっています。

道を少し曲がるだけで景色が大きく変わるので、その先の景色を見たくなってどこまでも走りたくなります。この海岸線を走るためだけに片江に来てもいいと感じたのは、景色の美しさはもちろんのこと、東京よりも遥(はる)かに空気が澄んでいるからかもしれません。

自然と足取りも軽くなり、走る速度も上がっていきます。もう少し時間があればもっと先の景色まで走れるのにと残念に感じましたが、旅はやり残しがあるくらいがちょうど。すべてを達成したら戻ってくる理由がなくなりますから。

今回の旅は天候に恵まれたとはいい難く、青戸さんいわく海の青さも10点満点で1点か2点なんだとか。きれいな海を見られなかったことは心残りですが、その心残りが再訪に繋(つな)がります。感動は未来にとっておくのも悪くありません。

心を穏やかにするのではなく抑えつけてきた自分を開放した旅

かたゑ庵での心をひらく時間の締めくくりは、大広間の隣にあるレコードスペース。
レコードで音楽を聴くというのは何十年ぶりでしょうか。それも大きなスピーカーで隣の家への騒音を気にすることなく、大音量で聴く音楽。

目を瞑(つむ)ると演奏者の位置が思い浮かぶほどの立体感のある音。それは効率ばかり追い求めてきた私たちが、知らないうちにどこかに置き忘れてきたものと重なります。
無駄だと思って削ぎ落としてしまった中に、物事の本質が詰め込まれている。

クリアできれいなものが正しくて、ノイズは邪魔なもの。デジタルの時代においてそれは正解なのかもしれませんが、もっとノイズが多い生き方をしてもいいのだということを、片江で過ごした時間から学んだような気がします。

ときには感情を表に出して自分を開放する。仲間を信じて自分をさらけ出す。僕に必要だったのは穏やかさではなく、知らないうちに抑えつけてきた自分を開放すること。ありがちな表現しかできませんが、「ここから自分が大きく変わる」そんな気がします。

自分を客観的に見つめ直して、どこか無理をしているなと感じたらかたゑ庵に行ってみてはいかがでしょう。きっと本当の自分を取り戻すきっかけになるはずです。

おまけ:べた踏み坂で自分の限界に挑んでみた

いい感じに片江の旅が終わりましたが、実は僕には境港でやってみたいことが1つありました。鳥取・島根の両県を繋(つな)ぐ全長1446.2メートル、最上部は高さ約45メートルある「江島大橋」。通称“べた踏み坂“への挑戦です。まるで壁のような坂と言われています。

この橋を島根県側から境港側まで走るコースがあり、速い人だと6分ちょっとで走り切るのだとか。さすがにそれだけの走力は持ち合わせていないのと、初見でいきなり実力を発揮できるほど甘いコースではありません。ということで目標は8分を切ること。

境港観光協会で荷物を預かってもらい、レンタサイクルを借りてまずは江島大橋の島根側まで。約5kmしかないので、走って移動しても良かったかもしれません。

遠くから見ると壁ですが、近くで見ればただの坂道。ただし延々と上りが続きます。
走り始めは調子が良かったものの、徐々に足が上がらなくなり、なんとか上りきったと思ったら、下りでスピードを上げるほどの体力が残っておらず大撃沈。

結果は8分2秒で目標達成ならず。まさか、ここでもやり残しを作るとは思いませんでした。境港や片江にはまだまだ訪れたい場所や見たい景色がいくつもあります。自分を抑え込みすぎているなと感じたら、心をひらくためにまた遊びに来るとしましょう。

かたゑ庵
所在地:〒690-1315 島根県松江市美保関町片江396
電話:0852-55-8600
URL:https://kataean.com

text by 重松貴志

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